MacBook with USB Type-C Charger and Connector

2020年のPCインターフェースとUSBの最新動向

1996年にUSB 1.0が登場してから約20年がたった。USB規格は最初の10年は主にPCにおけるデータ通信の規格として普及し、次の10年は主にスマートフォンへの充電の規格として普及したと言ってよい。2020年以降もUSBはデータと充電のインターフェースとして普及が続くと考えられる。

2020年のUSB規格におけるキーワードはUSB Type-C®、USB Power Delivery(USB PD)、USB4TMの3つになると考えている。近年のUSB規格は1.コネクタ、2.電力、3.データの3つのポイントで抑えることが肝要となっている。先ほど挙げた3つのうちUSB Type-Cはコネクタ、USB PDは電力、USB4はデータに対応するキーワードである。この3つのキーワードは独立しているものではなく互いに密接に関連している。

・USB Type-C

一般消費者の最も身近なデバイスであるスマートフォンのほとんどのモデルがUSB Type-Cを採用していることもあり急速に普及している。PCではハイエンドのノートPCを中心にUSB Type-Cの採用が増えている。一方、低価格帯のPCへの採用は2020年以降の課題と言える。そのほかの製品では高速なデータ通信が要求されるUSB SSDやDisplayPort Alternate Modeに対応するモニタなどでUSB Type-Cの採用が進んでいる。

USB Type-Cの最大の特徴は「リバーシブル」である。これまでのUSBコネクタ(レガシーコネクタと呼ばれている)とは異なりUSB Type-Cは表裏どちらでも差し込めて非常に使いやすくなっている。またUSB Type-Cは1種類の形状のコネクタのみが規格化されておりスマートフォンやPC、その他の製品も含めて消費者は同じケーブルを使うことができる。機能面ではUSB Type-Cは「ユニバーサル」なコネクタとなっている。USB PDやUSB4などのUSB規格だけでなくThunderbolt3やDisplayPortにも対応できる。さらにアナログオーディオ信号を通すこともできる。イヤホンジャックがないスマートフォンを使用している方も多いだろう。
一方消費者にとって分かりづらい点は、同じUSB Type-Cであっても製品によって対応している規格が異なっていることである。例えばPCとUSBハブがUSB4に対応していてもケーブルがUSB4に対応していないとUSB4は使用できない(この場合はUSB4の代わりにUSB 3.2での接続になってしまう)。ベンダは自社の製品がUSB PDに対応しているのか? USB4に対応しているのか? Thunderbolt3に対応しているのか? 等を消費者に分かりやすく示すことが必要と考える。

・USB PD

スマートフォンの充電技術としてはQualcomm社のQuick Chargeが代表的であり、その最新世代のQuick Charge4.0(QC4)はUSB PDのスーパーセットとなっている。そのためQC4を採用するスマートフォンは自動的にUSB PDに対応することになり、結果としてスマートフォンの充電手段としてUSB PDが普及している。PCにおいてはハイエンドのノートPCを中心にUSB PDへの対応が進んでいる。さらにPCではThunderboltTM 3の普及も進んでおり、これもUSB PDの普及の一因となっている。
USB PDは最大100Wの電力に対応している。これはスマートフォンやノートPCの充電にとって十分であり、また小型のデスクトップPCやモニタの動作にも十分である。USB PDのもう一つの特徴はAlternate Modeと呼ばれる機能である。これは「USB Type-CをUSB以外のモードで使う」ためのものであり、市場で普及しているAlternate ModeとしてはThunderbolt3やDisplayPortが挙げられる。USB PDを採用することで専用の電源コネクタを廃止したり専用のDisplayPortコネクタを廃止したりしているWindows PC/Macが登場している。
なおUSB PDは対応コネクタに制限があり必ずUSB Type-Cでなければならない。残念ながらUSBレガシーコネクタではUSB PDは使用できない。

USB Type-C Power Specification

・USB4

2019年9月にUSB-IFより発表された最新世代のUSB規格であり、これまでのUSB 3.2と比較して最大2倍のデータ通信速度を達成している。USB4はIntel社の独自規格であったThunderbolt3をベースにしている。規格成立の経緯からUSB4はまずWindows PC/Macとその周辺機器から普及していくとみられる。2020年のUSB4は各ベンダの仕込みの年になりそうである。USB-IFが提供するUSB4認証プログラムの準備が進んでおり、チップ(Silicon)の認証試験は2020年第1四半期に開始予定となっている。またUSB4を採用する製品の認証開始は2020年中頃以降の開始とみられる。そのためUSB4の認証を取得した製品が市場に登場するのは2021年以降の見込みである。しかしながらUSBは認証が必須の規格ではないため認証を取得しないUSB4の製品が早期に登場する可能性は十分に考えられる。
USB4の特徴は最大40Gbpsのバス上を様々なプロトコルのデータが通ることである。従来のUSB規格でもHID(Human Interface Device) ClassやMSC(Mass Storage Class)など様々なデバイスクラスをサポートしているが、USB4はそれをさらに推し進めた規格となっている。具体的にはUSB4はThunderbolt 3と同様にPCI ExpressとDisplayPortの信号を流すことができる。バスを共有しているため例えば高解像度のDisplayPortを使用しているとPCI Expressはあまり速度が出ないということになるが、それでも1本のケーブルで様々な規格に対応できることはメリットである。さらにPCI ExpressはSATAやEthernetへの変換が可能であり、またDisplayPortはHDMIやD-Subへの変換が可能である。そのためPCI ExpressとDisplayPortの2つに対応することで変換のひと手間はかかるものの非常に多くのインターフェースに対応できる。
USB4はUSB PDのAlternate Modeを使用しているためUSB4に対応するには必然的にUSB PDおよびUSB Type-Cへの対応が必須となる。

USB Type-C Data Rate Specification

最後に、USB4世代で注目すべきもう一つのトピックとしてアクティブケーブルを挙げておきたい。USB4 Gen3に対応するパッシブケーブルは最大0.8mとなっている。より長いケーブルを実現するためにUSB-IFはアクティブケーブルの議論を進めており、将来的に認証プログラムが開始される見込みとなっている。

USB-Type-C-Passive-Cable当社 Allion Labs Incは、USB Type-Cなど様々な規格策定に参画し、コネクタ、ケーブル、USB機器の認証、USB PDやQC4などの充電規格、Alternate ModeのThunderbolt3やDisplayPortまで、関連する様々な規格認証を提供しています。

USB Type-C®, USB-C® and USB4™ are trademarks of the Universal Serial Bus Implementers Forum (USB-IF).
Thunderbolt™ is a trademark of Intel Corporation.

Note: The English version of this article was released in the January 2020 edition of AEI Magazine.

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