読者の皆様の中で基板の中間点、表面実装部品端子の波形や電圧を観測したいと思ったことがあるでしょうか。製品評価に於いて、外部入出力を観測して特に問題が無ければ良いのですが、何等かの問題が見つかった場合、基板の中間点の波形や電圧を調べてデバッグを進めることが多いと思います。今回は、Sensepeek社のPCBite探針プローブについて調査してみます。
PCBiteとは
PCBiteは、スウェーデンに拠点を置くSensepeek社が開発・販売している探針プローブで先端が針先になっており、基板の中間点や小さな部品端子に接触させることが可能です。元々は、KickStarterを通じたクラウドファンディングで資金を調達しPCBiteを開発したようですが、日本に出回っている情報が少ないためか、国内では導入実績が少ないようです。DCから200MHzまでの波形を観測するのであれば、コストパフォーマンスは良いと思います。
図1 PCBite 磁石付きPCB Holder (4隅黒色円筒)、探針プローブSP10 (左)、SP200 (右)
PCBite探針プローブの種類
PCBiteに付属する探針プローブは、DCから10MHzまでの低周波用、100MHzまで、200MHzまでの高周波用があります。PCBbiteは、用途に応じて探針プローブをKit化して販売されており下記3種類があります。SP10は、探針プローブがピンヘッダーで出力されておりマルチメーターで電圧を観測したり、ロジックアナライザーでバス論理を観測する際に使用します。SP100とSP200は、探針プローブがBNCで出力されておりオシロスコープやスペクトラムアナライザーに接続し波形や周波数分布を観測する際に使用します。
- SP10 10MHz以下、マルチメーターとロジックアナライザー向け。(下記写真左列)
- SP100 100MHz以下、オシロスコープとスペクトラムアナライザー向け。(弊社未購入)
- SP200 200MHz以下、オシロスコープとスペクトラムアナライザー向け。(下記写真右列)
図2 PCBite探針プローブSP10 (左)、SP200 (右)
PCBbite探針プローブの使い方
PCBiteは、磁石付きPCB Holderで測定したい基板を挟んで金属板上に固定し、周囲に磁石付きアームを配置して上から探針プローブを落として基板の中間点に接触させます。磁石付きアーム終端のPCBiteロゴ表示部分 (図3右)は、針先のスプリング (図3左)を押し込む適度な針圧を掛ける重りを包含しています。この重りとスプリングの丁度良いバランスで安定した針圧が得られているようです。
図3 PCBite探針プローブSP10針先 (左)、アーム終端の重り (右)
どの位の大きさの表面実装部品までプロービング可能か気になる所ですが、こちらで実験してみた所、0603 (0.6 x 0.3 mm)のサイズまでならプロービングできました。但し、探針位置を決めるためにルーペが必要で、実装密度が高いと隣接端子とのショートも気を付けなければならず、決して易しくはありませんでした。
図4 PCBite探針プローブを0603 (0.6 x 0.3 mm)端子に接触させた例
パソコン、周辺機器の認証試験、分析調査
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最後に
今回は、Sensepeek社のPCBite探針プローブについて調査しました。探針プローブは、各メーカーからさまざま種類の製品が開発・販売されていますが、扱える周波数が高周波になるほど価格が上昇する傾向にあります。他社が開発・販売するGHz帯の探針プローブも存在しますが価格も相応に高額です。測定対象周波数がDCから200MHzまでなら、PCBite探針プローブも選択肢として検討する価値があると思います。もっとも、製造後に基板の中間点の波形や電圧を調べてデバッグする事態にならないよう、上流の開発段階でバグを潰しておくことが望ましいのは言うまでもありません。しかし、全ての開発製品が何の問題もなく一発動作する訳ではなく世の中の技術者は、いつの時代もデバッグに悩まされているようです。