弊社では、カーナビやカーオーディオといった車載機器のUSB試験を数多く実施しております。通常の車載機器はカテゴリとしてはEmbedded Hostになりますが、そのEmbedded HostのUSB試験の特徴としてメッセージに関するものが幾つかあります。これらは通常のSystem (Embedded Host以外のHost機器)の試験にはなくEmbedded Hostに特有のものになり、各メーカーはこれらのメッセージを表示するための仕組みを実装する必要があります。今回はこれらのメッセージに関する試験内容についてご紹介したいと思います。
Chapter 6 PET Automated Tests
MQP Electronics社のUSB-PETというテスト機器(以下PET)を使って試験を行います。
・6.7.22 : A-UUT “Device No Response” for connection timeout
接続したUSBデバイスからの応答が無い場合に、Embedded Hostが “No Response”或いは”Not Responding”等の警告メッセージ またはそれに類似した警告メッセージを30秒以内に表示することを確認します。具体的なシーケンスは以下の通りです。
- Embedded Host(車載機器)がGet Descriptor Deviceリクエストをデバイスに送信し、USBデバイス(今回はPET)がACKを返す
- Embedded HostがIN Tokenを送信し、PETがNAKを返す
- 以後、Embedded HostからのIN Tokenに対しPETがNAKを返し続ける
このときEmbedded Hostは接続したUSBデバイスは「no response」と判断しメッセージを表示しなければなりません。
・6.7.23 : A-UUT “Unsupported Device” Message
非対応デバイスが接続された場合に、Embedded Hostが”Not Support Device” 又はそれに類似したメッセージを30秒以内に表示するかを確認します。具合的にはPETが以下のVID/PIDを持つUnsupported Deviceをエミュレートします。
VID=1a0a, PID=0201或いは0202 (PIDは車載器側の仕様により変わります)
Chapter 7 Manual Interoperability Tests
Embedded Hostの接続性試験になります。Embedded Hostの仕様により実施する項目が異なります。
<全てのEmbedded Hostに必須の試験>
・7.3.6 : A-UUT Unsupported Device Message Test
以下5つのカテゴリの非対応デバイスを接続した時に非対応のメッセージを表示するかを確認します。これは6.7.23 : A-UUT “Unsupported Device” Messageと同じ内容です。
- Low-Speed Device
- Full-Speed Device
- High-Speed Device
- Super-Speed Device
- Composite device with more than 8 interfaces
<Embedded HostがUSBハブに対応しない場合>
・7.3.7 : A-UUT Hub Error Message Test
USBハブが接続された時、「Hub」や「ハブ」の文言を含めたエラーメッセージを表示するかを確認します。さらにそのUSBハブにEmbedded Hostが対応するUSB機器を接続してもそのUSB機器が動作しない事を確認します。
<Embedded HostがUSBハブに対応する場合>
・7.3.9 : A-UUT Hub Maximum tier Test
対応する段数を超えたUSBハブが接続された場合にエラーメッセージを表示するかを確認します。
例: USBハブを1段まで対応する場合に2段目のUSBハブを接続するとエラーメッセージを表示する。
・7.3.11 : A-UUT Bus Powered Hub Power Exceeded Test
Bus PowerのUSBハブを接続し、そのUSBハブにHigh Power(最大消費電流が 100mAを超えているもの)のUSB機器を接続した際に過電流を示すエラーメッセージを表示するかを確認します。
7.3.12 : A-UUT Maximum Concurrently Device Exceed Message Test
USBハブの4つのポートにEmbedded Hostが対応する同時接続数を超えてUSB機器を接続した場合に対応不可のエラーメッセージを表示するかを確認します。
例: iPhoneは1台まで対応の場合、2台目のiPhoneを接続した場合にエラーメッセージを表示する
なお、Embedded Hostが複数ポートを持つ場合はUSBハブに非対応であってもこの試験が適用されます。
Failの傾向
これまでの実績からFailの頻度が高い項目として以下が挙げられます。
・6.7.22 : A-UUT “Device No Response” for connection timeout
MQP社のPETと同等の状況を作ることが難しくお客様の手元での検証が難しい事がネックになっています。
・7.3.6 : A-UUT Unsupported Device Message Test
・7.3.7 : A-UUT Hub Error Message Test
7.3.6と7.3.7のエラーメッセージが同じものになっており、7.3.7のエラーメッセージに「Hub」の文言が含まれていないことからFailとなりました。これに対し7.3.6と7.3.7の処理を分け、7.3.7のエラーメッセージに「Hub」の文言を含めていただくことでPassとなりました。
まとめ
Embedded Hostには今回ご紹介したメッセージを表示させる機能を実装しなければなりません。
そのため車載機器などのEmbedded Host機器を設計するメーカーは機器の仕様を決めたあとに、上記のメッセージに関する試験内容を十分に理解しどのような実装にするか決める必要があります。
特にUSBハブに対応するかどうかに関する仕様設計は、ソフト開発に大きな影響を与えるので注意が必要です。
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