USB PDコントローラー(AU16027)でUSB PD充電器を制御してみました

身の回りにUSB Power Delivery(以下、PDと記す。)を搭載した製品が増えてきました。USB PDが利用できると充電時間が短縮される等、メリットも多いです。今回は、Source機器と呼ばれるUSB PD充電器にPDコントローラー(AU16027)とType-C ブレークアウト基板(AUT17083)を接続し、動作に関して実験を交え調査してみます。

USB PDとは

USB PDは、従来から策定されているBattery Charge 1.2(以下、BC1.2と記す。)のVbus電圧と電流の種類を増やし、取り扱える電力を拡張させた規格です。コネクターは、レガシーと呼ばれるType-A, micro-Bではサポートしておらず、Type-Cである必要があります。

BC1.2で扱える電圧と電流及び電力は、5V 1.5Aです。充電電力7.5Wでも充分と思えますが、近年はモバイル機器に搭載されるLi-Ion電池が大容量化し、持ち運べる充電器とも言えるモバイルチャージャーもスマホユーザーを中心に普及しています。充電電力7.5Wでは満充電までに長い時間が掛かるので、より短い時間で充電が完了する仕組みが求められていました。

そこで、USB-IFがUSB PDを策定し供給電力を最大20V 5A 100Wまで拡張しました。現在、市場に流通しているUSB PD充電器は、20V 3A 60Wまでの仕様が多いようです。

USB PD充電器の実験

では、市販のUSB PD充電器にPDコントローラー(AU16027)を接続して動作を確認してみます。左側がサンプルに使用したUSB PD2.0 5V 3A, 9V 3A, 12V 2.25A対応の充電器で、右型がPDコントローラー(AU16027)です。

PCにPDコントローラー(AU16027)を接続し制御プログラムを起動すると以下画面が出て、DUT(USB PD充電器)→Allion PD(AU16027)の向きにVbus 5V給電されている事が分かります。

初期状態は、5Vモードなので自作した簡易電子負荷を接続し2Aを引いてみました。サンプルに使用した充電器は、5Vモードで3A供給可能ですが、過電流保護が作動する可能性があるので負荷電流は2Aで中止しました。

次に、PDコントローラー(AU16027)からPower Request(12Vモード)を送信して同様に1Aを引いてみました。12Vモードで2.25A供給可能ですが、負荷電流は1Aで中止しました。なお、試しに負荷電流2Aまで引いてみましたが、電流計が2A+αを示した所で青色LED電圧計が消灯したので、充電器の過電流保護が作動したようです。

USB PD充電器+Type-Cブレークアウト基板(AUT17083)+PDコントローラー(AU16027)を接続してCCに細工をしてみます。USB PD充電器を12Vモードに設定してType-Cブレークアウト基板のCC1ジャンパーを抜いてみます。USB PD充電器が端子開放を検出してVbus 12V給電を停止しました。

次に、CCの通信波形をOscilloscopeで観測してみます。下記波形は、5Vモードから12Vモードに遷移した時のVbusとCCの電圧波形です。左側の拡大波形を見るとCCに何等かのメッセージが送信されていることが分かりますが、PDコントローラーがUSB PD充電器に12Vモードのリクエストを送信していると推測できます。同様に右側の拡大波形は、USB PD充電器がPDコントローラーにGoodCRCを送信していると推測できます。

下記波形は、CCの通信波形拡大図でBiphase Mark Coding(BMC)されていることが確認できます。左側のカーソル間波形は、1UI期間中にData遷移が無いのでLogic 0を、右側のカーソル間波形は1UI期間中にData遷移しているのでLogic 1をそれぞれ示します。電圧軸ではなく時間軸方向にLogic 0/1を表現しているので、周波数/位相変調に類似する方式と考えられます。

自作した簡易電子負荷にご興味ある方は、下記コンテンツをご参照下さい。

専門的な回路設計が不要な半田付けとドライバーだけで作るUSB Vbus 5V, 2Aの簡易電子負荷

終わりに

USB PD3.0規格がリリースされ、今後は大電力供給可能な機器が市場に出回ることが予想されます。USB PD認証試験にパスすれば、性能と機能に問題ないと考えられます。しかし、扱う電力が最大20V 5A 100WでBC1.2の5V 1.5A 7.5Wと比べ2桁増加しています。USB PD充電器の安全性を考えると、過電流保護、過熱保護に加え、人間の生活圏で発生する埃、食料粉末、化粧粉末等、不純物付着によるハーフショートと呼ばれる短絡状態にも耐える安全性を実装すると、エンドユーザーが安心してUSB PDの恩恵を受けられるでしょう。なお、充電器の安全認証にご興味ある方は、モバイルコンピューティング推進コンソーシアムのモバイル充電安全認証Webをご参照下さい。

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