概要
USB Type-Cが市場に普及してきました。充電器やノートPC、タブレット、スマホにType-Cが搭載され更に、PDが実装され急速充電にも対応する製品が増えています。今回このType-CのDual-Role-Power(以下、DRPと記す。)について実験を含めて調査します。
DRPとは
USB Type-Cコネクタを搭載する製品は電力の観点から以下の3つに分けられます。
Source only : 電力をあげるだけの製品。例: 充電器。
Sink only : 電力をもらうだけの製品。例: USBメモリ。
DRP : SourceとSinkの両方の能力を持つ製品。例: スマホ、タブレット、ノートPC。
スマホはDRPであることがほとんどです。Sourceである充電器を接続するとスマホはSinkになります。またSinkであるUSBメモリを接続するとスマホはSourceになります。USB Type-C規格の特徴のひとつにDRP (Dual-Role-Power)があります。これは電力の入出力の両方が可能なType-Cコネクタのことを指します。接続された相手により電力をあげることもできれば電力をもらうこともできる便利な機能です。
DRPとDRPの接続実験
では、USB Type-CのDRPの製品同士をつなぐとどうなるでしょうか? 実験をしてみました。ここではDRPの製品としてAndroidスマホを取り上げます。スマホと充電器を接続して充電をすることは一般的ですが、スマホ同士を接続することはあまりないのではないかと思います。最近のAndroidスマホはほとんどがUSB Type-Cコネクタを搭載しており、市販のUSB Type-Cケーブルを使って簡単にスマホ同士を接続することができます。
今回用意したAndroidスマホはGoogle Pixel2(左)とLG G6(右)です。
それぞれ本体の下部にType-Cコネクタを搭載しています。
この2機種を以下のようにType-Cケーブルで接続します。
スマホの画面の右上にある電池のアイコンによって充電しているかどうかが確認できるわけですが、数回接続と切断を繰り返してみたところ以下の2つのパターンがあることに気づきます。
1. Pixel2がSource、G6がSinkになっているパターン
Pixel2の画面上部とG6の画面上部
2. Pixel2がSink、G6がSourceになっているパターン
Pixel2の画面上部とG6の画面上部
なぜ2つのパターンがあるのでしょうか。Type-Cコネクタの製品はCC(Configuration Channel)という信号線を用いてSourceとSinkの役割の判別を行っています。他のUSB製品を接続していない状態でのCCの電圧を見ることでその製品がどのような特徴を持っているのか判別することができます。CCはCC1とCC2の2つがあります。これはType-Cコネクタの特徴であるリバーシブル接続に対応するためです。
CCピンの波形観測
波形観測にはTotalPhase社のUSB PD Analyzerを使用しました。以下は、Type-Cコネクタのスマホ用充電器をスマホと接続していない状態でのCC1の電圧です。この例ではCC1は約3Vで一定となっています。このようにSource onlyの場合はCCの電圧は0V以外の電圧で一定値になります。
以下はDRPであるPixel2の例です。CC1の電圧が0Vと3Vの間で切り替わっています。電圧が3VのときはSourceの状態、電圧が0VのときはSinkの状態になっています。確認したところ約60%はSource、約40%がSinkの状態になっていました。
以下はG6の例です。こちらも約60%はSource、約40%がSinkの状態になっていました。
波形3: G6のCC1
DRPのSourceとSinkの割合ですが30%~70%の間で自由に設定することができます。Pixel2とG6はいずれもSourceが60%となっており、どちらかというとSourceの状態を取りやすくなっています。そうするとこれらを接続したときにPixel2とG6のどちらがSourceの状態になるかは同程度の確率になるのではないかと予想されます。しかし、接続と切断を100回繰り返したところ以下の通りになりました。明らかにG6がSourceをとる確率が高くなっています。
Pixel2の状態 | G6の状態 | 100回中… |
Source | Sink | 30回 |
Sink | Source | 70回 |
少々意外な結果となりました。Pixel2とG6はいずれもSourceの割合が60%となっていますが、CC1の電圧の波形をみるとSource/Sinkの間の切り替えの仕方には差がみられます。波形2と波形3のDRPを組み合わせると波形3のほうがSourceをとりやすいといった、相性のようなものがあるのではないかと予想しています。
まとめ
・DRP同士を接続すると一方からもう一方へ充電ができます。
・SourceまたはSinkのどちらの状態をとるかはその製品の設計次第になり、30%~70%の範囲で自由に設定できます。
・Sourceの割合が同じDRP同士であってもSourceとSinkの状態の切り替えの仕方によりどちらの状態になりやすいかが決まっていると考えられます。
余談ですがAndroidスマホでは以下のようにSourceとSinkの設定を任意で切り替えることができます。Charge this device (日本語版では「この端末を充電する」)に設定するとSinkに設定でき、Supply power(日本語版では「電源として利用する」)に設定するとSourceに設定できます。これにより電池を分けてあげる、または電池を分けてもらうといったことが簡単にできるようになっています。
本記事に関するお問い合わせ
One comment
Pingback: Connecting two mobile phones through USB Type-C – ShinanoTech