USB認証試験を実施するにあたりあらかじめ試験対象の機器(DUT: Device Under Test)の仕様を伺い、それに従って試験を実施することがあります。レガシーコネクタのDUTの試験においてはDUTの仕様を記載するための特定のフォーマットはありませんでした。一方、USB Type-CやUSB PDのDUTの試験においてはVIF(Vendor Info File)というUSB-IFが定義したフォーマットでDUTの仕様を記載し、これを試験で使用することとなりました。
当初はUSB Type-CコネクタのDUTにのみVIFが必要となっておりましたが、その後レガシーコネクタのDUTに対してもVIFが要求されるようになりました。その結果、現在では全てのUSB認証試験でVIFの作成・提出が必要となっています。
今回はこのVIFについて、VIFが必要な試験(一部手順含む)、作成方法、その他注意事項等についてご紹介したいと思います。
■VIFが必要な試験
VIFが必要な試験は以下のとおりです。
- USB3CV/Connector Type Test — 全てのDevice(Peripheral)とHubのUFPが対象。Descriptor関連のテスト。
- Link Layer Test — USB3.2対応の機器全てが対象。Link層のテスト。
- Type-C Functional Test — Type-Cコネクタ搭載の機器全てが対象。Type-C規格で拡張された部分に関するテスト。
- Power Delivery Test (2.0/3.0) — USB PD対応の機器全てが対象。USB PDに関するテスト。
- Type-C Source Power Test (QuadraMAX) — Type-Cコネクタ搭載のSource機器が対象。Type-Cの電源供給に関連したテスト。
■VIFの作成
VIFの実体はテキスト形式のファイルで、そのDUTの情報・仕様を記載したものです。これを作成するにはUSB-IFが提供しているVendor Info File Generatorというツールを使用します。このツールは以下のサイトよりダウンロード可能です。
https://www.usb.org/documents
※現行のバージョンは1.2.4.0ですが、定期的に更新されています。
■VIF Generatorでの作成手順
各項目に対してテキストボックスに情報を記入する、またはプルダウンメニューから該当の項目を選択するというシンプルなものです。ここでは例として USB2.0 Device Standard-Bコネクタ搭載の製品のVIF作成手順を記載します。
【Infoタブ】
全てのDUTで共通であり、ベンダ名、モデル名等の基本情報を登録します。
①Vendor_Name=ベンダの名前(英文社名)を入力します。
②Model_Part_Number=モデル名を入力します。
③Product_Revision=リビジョンであり番号は任意です。
④TID=Test IDを入力します。
⑤VIF_Product_Type=Deviceの場合は「0: Port」を選択します。
⑥Port_Label=ポート番号を入力します。
DUTが複数のポートを持ち、さらにそれぞれのポートの仕様が異なる場合は各ポート毎にVIFを作成する必要があります。
【VIF Productタブ】
全てのDUTで共通であり、主に製品の基本情報を登録します。
⑦Connector_Type=コネクタの形状。今回の例では1: Type-Bを選択します。
⑧Captive_Cable=今回の例ではNoを選択。DUTがUSBメモリなどのCaptive Cableの場合はYesになります。
⑨Port_Battery_Powered=今回の例ではNoを選択。試験対象のポートがDUTに内蔵されているバッテリで駆動する場合はYESになります。
【USB Deviceタブ】
前の⑦でType-Bを選択した場合、下記のタブが表示されます。他を選択した場合は別のタブが表示されます。
⑩Device_Speed=ここでは「0: USB 2」を選択
⑪Device_Contains_Captive_Retimer=そのポートがリタイマを内蔵している場合はYesになります。ほとんどの場合はNoになるかと思います。
①~⑪まで入力完了したら右下の「適用」ボタンを押します。その後、以下の様に作成が完了した旨のポップアップが表示されます。
作成されたファイルはVIF Generatorの実行ファイルであるVendorInfoFileGeneratorRelease.1.2.4.0.exeと同じフォルダ内に保存されます。
VIFをテキストエディタで開くと以下のようなイメージになります。
尚、作成された内容を修正したい場合は、下記ファイルを直接編集する事も可能ですが、VIF Generatorの【Infoタブ】内にある「Load VIF」ボタンから修正したいVIFを開いて修正し、再度保存する方法をお薦めします。
直接編集した場合は本来設定できない内容に書き換えることも可能であり、この場合テストが正常に実施できない可能性があります。
■VIFを使った試験の例
では、VIFを使って具体的にどのように試験を実施しているのでしょうか?ここでは「USB3CV/Connector Type Test」を試験の実施例と共に紹介します。これはTestbed PCにインストールしたUSB3CVツールで実施します。
1. Testbed PCに試験対象のDUTを接続し、USB3CVを起動します。ウィンドウの左上のSelect Test Suiteの一覧から「Connector Type Tests [beta]」を選択します。
2. 接続された機器の情報(VID、PID等)が列挙されたポップアップが表示されるので、DUTを選択して「OK」をクリックします。
3. 「Standard USB Current」を選択し、下の「OK」をクリックします。DUTとTestbed PCの接続により選択項目は変わります。
4. VIFを要求するポップアップが表示されるので下の「OK」をクリックします。
5. DUT用のVIFを選択し「Open」をクリックします。
6. テストが実行されます。各項目の実行および判定は自動で行われます。Connector Type Testsは複数の小項目から成っており、それらはウィンドウの左下に表示されます。項目が緑色になっているところはPassを表しています。最終的に全てPassすると「Test suite Passed」のポップアップが表示されます。
7. 所定のフォルダに自動でログが生成されますので内容を確認します。下記のログ(抜粋)にてTD9.1、TD9.2ではDescriptor関連のチェックを行っていますが、レガシーコネクタのDUTの場合はPD Descriptorを持っていなくてもPassと判定されます。
■各項目の定義
USB2.0 Device Standard-BコネクタのVIF作成例は最もシンプルなケースになりますが、Type-CコネクタのDUTやPower Delivery対応のDUTは入力項目も多岐にわたり、内容も複雑になります。もし不明点がある場合はVIF Generatorと同じフォルダ内にあるPDF形式の入力マニュアル(現在の最新版はVendor_Info_File_v1.38.pdf)を参照する事で各項目の内容を把握する事ができます。これは各項目の定義についてのマニュアルになりますので、必要に応じてこのファイルも参照しながら作成する事をお薦めします。
■最後に
もしDUTの実装とVIFの内容に矛盾があった場合、本来実施するべき試験項目が実施されない、本来実施しなくてもよい項目を実施してしまう、Pass/Failを誤判定してしまう、などの現象が発生することがあります。
そのため製品の仕様を元に正しいVIFを作成していたただく必要がありますが、特に初めて作成される際は不明点が出てくることもあるかと思います。そのような場合はお気軽にお問い合わせください。
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