USB電気試験で使用するFixture

USB試験には電気特性に関する試験がありますが、テスト対象機器(以下DUT)を測定するためにはオシロスコープやマルチメーターだけではなく、殆どのケースでFixture(治具)を使います。当社でも様々なFixtureを保有しており、試験毎にそれぞれのFixtureを使いわけておりますが、今回は電気試験の各項目と使用されるFixtureを紹介します。

■Back Voltage

DUTを上のコネクタ部分に接続後、マルチメーターを使いグラウンドを一番左のGND、もう一方を測定したい部分 (D+、D-、VBUS) にあてて電圧値を測定します。

 

■Power Current

消費電流値を測定する試験であり、以下の黒のFixtureはUSB 2.0(FS、HS)、青のFixtureは USB 3.2(SuperSpeed)の測定で使用します。向かって左側にA Portのコネクタが搭載されておりそのPortにDUTを接続し、右側はTestbed PC (またはPCとの間に接続したHub)に接続します。また、赤丸の部分はVBUSでありここに電流計を直列に接続します。

  

 

■Inrush Current (突入電流)、Full-Speed Signal Quality (Device)

Inrush Currentではプローブを緑部分に接続します。尚、緑の部分はVBUSであり、電流プローブを接続できるようにワイヤが引き出されています。Full-Speed Signal QualityではD+とD-にシングルエンドプローブを接続します。(それぞれのプローブはオシロスコープに接続)

 

■Full-Speed Signal Quality (Embedded Host)/Drop&Droop Test

Full-Speed Signal Qualityの測定では以下のFixtureの赤部分を使用します。Device DUTの試験と同様、 D+とD-にシングルエンド プローブを接続します。Drop Testでは青部分を使用し、VBUSの+と-のピンにマルチメーターのプローブの+と-の部分をあてて測定します。Loadの為の機器は右側の機器を使用し(USB 2.0用)、オレンジ部分にある100mAと500mAの何れかのスイッチにレバーを入れ、Load値を設定する事が可能です。また、Droop試験では青部分のVBUSピン、右側のFixtureの黄色部分のDSCピンをそれぞれオシロスコープに接続しDroop電圧を測定します。

  

 

■High-Speed Signal Quality

試験時はSMAケーブルを使用しますが、FixtureにそれぞれD+、D-の計2本のケーブルを接続します。

・Legacy Device: 写真上部にあるStandard-Aコネクタに付属のショートケーブルでDUTに接続し、2つのStandard-BにはPCからのケーブルを接続します。一方はFixtureの電源用、もう一方は製品に対しPCの専用ツールからTest_Packetモードに入れる為に使用します。写真上部にある2つの丸い端子がSMAケーブル用です。

・Legacy Host: 左側の端子がSMAケーブル用です。

・USB Type-C Host/Device: SMAケーブル接続端子は裏面にあります。(Legacy Device同様、付属のショートケーブルでDUTに接続)

・USB Type-C Host: 右側の丸い端子がSMAケーブル用です。

 

■Packet Parameter/Chirp Timing/Suspend Resume/Test_J、Test_K、Test_SE0_NAK

Deviceの試験には写真左のFixture、Hostの試験には右のFixtureを使用します。Packet Parameterでは差動プローブをChirp Timing/Suspend Resume試験ではシングルエンドプローブを接続し、Test_J、Test_K、Test_SE0_NAKではマルチメーターのケーブルをあてます。

  

 

■Receiver Sensitivity

Packet Parameter同様、差動プローブを接続します。構造は基本的にDevice用Fixtureと同じですが、中央部にGeneratorからの信号受信用コネクタがあり、ケーブルを接続します。

 

■SuperSpeed(Gen1) TD1.1/TD1.3/TD1.4/TD1.6/TD1.8(Long Channel)/TD1.9(Long Channel)

Tx、Rx関連の試験ではそれぞれ以下を使用します。

・Legacy/Device (TD1.1/TD1.3/TD1.6/TD1.8)

以下2つのFixtureを使用します。Fixture間はStandard Portの場合は3m、Micro Portの場合は1m、Captiveケーブルの場合はショートケーブルで接続します。左側のFixtureにはDUTやオシロ/BERTに接続するSMAケーブルを、右側のFixtureにはPING.LFPS信号の発生器へ接続するためのSMAケーブルを接続します。

・Legacy/Host (TD1.1/TD1.3/TD1.6/TD1.8)

Device同様にHost用の2つのFixtureを使用します。Fixture間は3mケーブルで接続します。それぞれの用途はDevice用Fixtureと同様です。

・USB Type-C (TD1.1/TD1.3/TD1.6/TD1.9)

USB Type-C用の2つのFixtureを使用します。Fixture間は1mケーブルで接続します。TD1.9のLong Channelのみ2mケーブルで接続します。

尚、DUTに接続する左側のFixtureはDeviceとHostでそれぞれ異なります。左写真はDevice、右写真はHost用であり、それぞれの写真の右側にあるFixtureはTx(TD1.1/1.3/1.6)とRx(TD1.9)では同じ形状のものを使用しますが、型番が異なります。

  

 

■SuperSpeed(Gen1) TD1.2/TD1.8(Short Channel)/TD1.9(Short Channel)

・Legacy/Device (TD1.2/TD1.8)

オシロスコープ/BERTとそれぞれSMAケーブルで接続します。

・Legacy/Host (TD1.2/TD1.8)

・USB Type-C/Host&Device共通 (TD1.2/TD1.9)

 

■使用時の注意

特にSuperSpeed試験時において、SMAケーブルを接続する際にFixture側の接続部分(以下赤枠部分)にテンションがかからないように気を付ける必要があります。むやみにテンションがかかるとFixture側のコネクタ部分(赤丸)の接触不良が発生する可能性があり、その後正常に試験ができなくなる(波形がでなくなる)可能性があります。

 

■まとめ

今までご紹介した通り、Fixtureには様々なタイプがあり試験によってそれらを使い分ける必要があります。それと同様にDUTにも様々なタイプがありますが、DUTによっては特殊な位置にPortが搭載されているケースがあります。その時にどうしても無理な接続になりがちですが、そのような場合でもテスターはFixtureにテンションがかからないように工夫(下に台のようなものを置く等)して測定する必要があります。また、測定経験を重ねると使い方も慣れてきますが、例え慣れた場合でも常に丁寧に扱い、破損させない様に心がける必要があります。

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