Programmable Power Supply (PPS)のSourceデバイスの認証試験のご紹介

はじめに

以前の記事でUSB Type-C/PD Source製品のDUT(Device Under Test)に対するType-C/PD Source Power試験を紹介しました。今回はType-C/PD Source Power試験のProgrammable Power Supply (PPS)のSource Deviceの認証試験について紹介します。

PPSの概要

写真はUSB-IFからReference Deviceとして認定されているPPS対応の25W Sourceデバイスです。

このSourceデバイスは出力電圧固定のPDO (Power Data Object)を2種類、PPSのAPDO (Augmented Power Data Object)を2種類の合計4種類のPDOをサポートしています。APDOは供給可能な最大電流値と動的に可変な電圧範囲が含まれています。

Object (1): 5.0V/3.0A (固定電圧)
Object (2): 9.0V/2.77A (固定電圧)
Object (3): 3.3-5.9V/3.0A (PPS)
Object (4): 3.3-11.0V/2.75A (PPS)

PPS対応のSinkデバイスをType-Cケーブルで接続するとPPS対応SourceデバイスはObject (1)から(4)のPDOを含むSource Capabilities MessageをSinkデバイスに送ります。

SinkデバイスはObject(1)から(4)のPDOのうち1つを選択し、Object番号を含んだRequest MessageをSourceデバイスに送ります。SinkデバイスがObject (1)または(2)を選択した場合、Sourceデバイスは5.0Vまたは9.0Vの固定電圧を出力します。以下の例はObject (2)を選択したときのRequest Messageです。

SinkデバイスがObject (3)または(4)を選択した場合、SourceデバイスはPPSモードで動作します。Sinkデバイスは選択したAPDOに従い、必要としているVBUS電圧(20mV刻み)とCurrent Limit(50mA刻み)を含むRequest Messageを送ります。以下の例はObject (4)を選択したときのRequest Messageです。

この例ではSinkデバイスはVBUS電圧7.16V、Current Limit 1.90Aをリクエストしています。

SinkデバイスはPPSモードを維持するためにtPPSRequest(max 10秒)の間に少なくとも1回Request Messageを送る必要があります。

PPS Sourceデバイスの認証試験ではTE(Test Equipment)としてQuadraMAX hardware unit(以下、QuadraMAX)を使用します。QuadraMAXはPPS Sinkデバイスとして動作し、PPS Sourceデバイスに対して様々なVBUS電圧、Current Limitをリクエストします。

PPS Sourceデバイスはリクエストに応じてVBUS電圧を出力し出力電流を制限する必要があります。

PPS Sourceデバイスの認証試験の内容

PPS Sourceデバイスの認証試験はUSB Type-C/PD Source Power試験のご紹介で解説したSPT.1からSPT.5を実施した上で以下の試験を実施します。

・SPT.6 PPS Voltage Step Test
・SPT.7 PPS Current Limit Test

SPT.6 PPS Voltage Step Test
QuadraMAXはPPS Sink Deviceとして動作し、PPS Source Deviceがサポートする電圧範囲において、次々と出力電圧をリクエストします。要求した電圧が正確に出力されているか、電圧が遷移する際のslew rateのスペックが守られているかなどを確認します。

SPT.7 PPS Current Limit Test
QuadraMAXはPPS Sink Deviceとして動作し、Sink DeviceがリクエストしたCurrent Limitが守られているかなどを確認します。

SPT.6及びSPT.7を実施する際はTotal Phase PD Analyzerで取得したPPS SourceデバイスとPPS Sinkデバイスの通信ログも確認します。

Total Phase PD Analyzer + Type-Cケーブルの抵抗値の測定

PPS TestはTotal Phase PD Analyzerを使ってPDトレースをキャプチャしながら試験を実施します。試験を開始する前にTotal Phase PD Analyzer + Type-Cケーブルの抵抗値を測定します。Type-CケーブルはCable IR Dropの影響を小さくするため、できる限り短いケーブルを使用することが望ましいです。

接続構成

・ QuadraMAXのPort 1とPort 4にTotal Phase PD Analyzer + Type-Cケーブルを接続
・ QuadraMAXの背面とPCをLegacy USBケーブルで接続

 

Total Phase PD Analyzer + Type-Cケーブルの抵抗値を測定します。
・QuadraMAXの電源ON
・QuadDrawを起動

・ Test Controls –> Cableタブ –> EPC 2 IRDrop Testを選択
・ Runボタンを押下すると抵抗値の測定開始
・ Test ResultのCable Resistance Over Vbus + Ground: の値をメモ(下の例では70mΩ)

Single-Port PPS Source試験手順

接続構成


・ DUTのSource-capable portとQuadraMAXをTotal Phase PD Analyzer + Type-Cケーブルで接続

試験手順
・ QuadDrawを起動
・ Test Control WindowのSourceタブを選択
・ Cable ResistanceにQuadraMAXをTotal Phase PD Analyzer + Type-Cケーブルの抵抗値を入力
・ 下の例ではPort 1に70mΩを入力
・ DUT Power CapabilityにDUTの総出力Watt数を入力
・ DUT VIF File: VIFを読み込み
・ QuadDraw上でPPS Voltage Step Test (SPT.6)とPPS Current Limit Test (SPT.7)を選択(まだRunは押さない)

・ Total Phase Data Centerを起動

・ Analyzer –> Connect to Analyzer

・ 表示されたTotal Phase PD AnalyzerをクリックしてOK。

・ Total Phase Data Center上でRunを押下(キャプチャスタート)

・ QuadDraw上でRunを押下して試験開始。

PPS Voltage Step Test (SPT.6)とPPS Current Limit Test (SPT.7)はそれぞれ40分~50分程度かかります。PPS Voltage Step Test (SPT.6)とPPS Current Limit Test (SPT.7)それぞれ分けて実施しても良いです。

・ テストが完了したらTotal Phase PD Analyzerのキャプチャをストップ

・ Total Phase PD Analyzerの結果を保存

QuadraMAXの結果はSettingを押下してSetting Windowを表示させ、Save LocationのTest Report Directory:に結果が保存されています。

QuadraMAXの試験結果を確認したい場合は保存されたログをQuadraViewで開くことで確認できます。

Total Phase PD Analyzerでキャプチャしたトレースログを確認したい場合は保存されたログをTotal Phase Data Centerで開くことで確認できます。

QuadraMAXのログとTotal Phase PD Analyzerでキャプチャしたトレースログを相互参照することにより試験結果の解析を行うことができます。

まとめ

今回はPPSの概要とSingle-Port PPS Sourceデバイスの試験について解説しました。USB機器の設計は利便性と接続性だけでなく安全性も求められます。PPSは電圧・電流を動的に調整することにより充電の際の発熱や変換ロスを抑えることができ、安全性の観点から注目を集めています。今後PPS対応機器が増えていくと予想されるので、ぜひ本記事を参考にしてください。

<参考元>

USB-IF: QuadraMAX PPS Test Manual

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