USB試験を実施する際は、各試験項目毎にPassかFailを判定し、最終的にはこれらの結果をまとめたレポートを作成、提出します。
然しながら、お客様のDUTの仕様によっては試験とは別に特別な対応が必要になる事があります。当社では今までに様々なタイプのDUTの試験を実施してきましたが、その経験を踏まえて実際に見てきた特殊ケースについてご紹介していきたいと思います。
■ケース1・・・USB3.2電気試験でFixture挿入不可
USB3.2の場合、SuperSpeed用の電気試験を実施します。この試験を実施する際は以下の様なFixtureをDUTに接続します。
[Standard-A Host Long用]然しながら、DUTの設計によってはFixtureを接続できない事があります。
「測定対象のUSBポートが奥まった場所にある (Host/Standard-A Port、Type-Cの場合)」
下記のようなイメージですが、Fixtureのコネクタの両サイドのカバー部分がポート横のカバー部分にあたってしまい、奥まで挿す事ができません。
このような場合、通常はDUTのカバーを外します。それによってFixtureを完全に奥まで挿す事ができるようになるので、測定可能となります。
尚、そのカバーが我々で外せない場合は以下の何れかの方法となります。
①既にカバーが外された状態のDUTを別に用意する
②延長ケーブルを装着する (以下サンプル: Type-C Plug to Type-C Receptacle)
但し、②を選択した場合はケーブルの長さの分、信号品質に劣化が生じるため結果へ悪影響を与える事があります。
尚、別のケースとしてUSBポートのすぐ横に電源コードの接続口がある場合、その電源ケーブルがFixtureの接続を邪魔して接続できない事ありますが、その場合も同様にカバーを外します。
■ケース2・・・Windows搭載のHost
High-Speedの電気試験の一部項目ではDUTを所定のテストモード(Test_Packet, Test_J, Test_K, Test_SE0_NAK)に入れる必要があります。
Windowsを搭載しているHost DUTの場合はUSB-IFがリリースしているテストツールを用いて各テストモードに入れることができます。
その場合に気を付けなければいけない点があります。このテストツールを起動すると試験対象のUSBホストコントローラがテストモードに入ってしまうため、通常のUSBホストコントローラとしては動作しなくなるという点です。
従って、以下のケースではテストツールが動作しているとUSBマウスやキーボードが使えなくなってしまいます。
・マウス、キーボードを接続するUSBポートとテスト対象のUSBポートが同一のホストコントローラ配下にある
・マウス、キーボードがDUTのUSBポートからしか接続する手段がない(別のインターフェースがない。例: PS2ポート)
DUTが2つ以上のホストコントローラを持っている場合はテストモードに入っていない方のホストコントローラにマウス等を接続することで対応できます。
DUTが持っているホストコントローラが1つだけの場合は以下のような対応ができることがあります。
“LAN Portと別のPCを接続し、DUT側のリモートデスクトップ機能を有効にし、別PCからDUTにリモートデスクトップで接続してテストツールを操作する”
よって、DUTのホストコントローラが1つだけの場合はリモートデスクトップ機能が使えないか確認いただければと思います。
また、DUTによってはノートPCのタッチパッド等がUSBとは別のインタフェースで接続されていることがあるので、これを用いてテストツールを操作できることがあります。
■ケース3・・・LEDを使ってメッセージを表示
以前、車載器のUSB試験におけるメッセージに関する内容を掲載しましたが、車載器に限らずEmbedded Hostのカテゴリに分類されるDUTに関してはメッセージに関する試験があります。然しながら、LCDなどの画面がないタイプのDUTがあります。
その場合はDUTは文字や絵などのメッセージを表示することができませんが、試験はFailとなってしまうのでしょうか?実は必ずしもそのような事はなく、何らかの手段でエンドユーザに対して通知ができればPassとなります。
例えば、DUTの電源On/Offを示すLEDを使用することが考えられます。
具合的な例として以下のように点灯と消灯のパターンでそれぞれのメッセージを表現します。こういった仕様を事前に我々に伝えていただければ、試験時にLEDの点灯パターンと試験条件が合致しているかをチェック致します。
・Unsupported Device=点灯(1秒)→消灯(1秒)→点灯(1秒)→消灯(1秒)・・・
・Hub Error=点灯(2秒)→消灯(1秒)→点灯(2秒)→消灯(1秒)・・・
ケース4・・・長時間の電源Onによる試験結果への影響
USBコントローラ等の半導体チップは動作温度により特性が変化します。
DUTの電源を投入してすぐに試験を実施したときと長時間駆動後に試験を実施したときで結果が異なることがあります。放熱をはじめとするDUTの設計によっては意図しないFailが発生してしまうことがありますのでご注意ください。
■終わりに
今回、4つのケースを紹介いたしました。ご紹介したケース以外でも、問題が発生した際にすぐにFailとは判断せず、都度お客様とも確認させていただいた上で対応しております。
ご紹介したケースに該当する可能性がある場合は、その内容を把握していただき必要であれば事前に当社に情報をいただければスムースに試験を行うことができます。
また今回ご紹介した4ケースに限らず、何らかの懸念点がある場合はぜひご相談ください。