はじめに
eARC(enhanced Audio Return Channel)の概要・利点については、
HDMI2.1の新機能(eARC)を対応したデバイスが市場へ既に登場した!
をご覧いただければと思います。今回は、eARCについて信号波形やコンプライアンステストなどの観点でもう少しだけ詳しくご説明いたします。
eARCの信号波形
eARCはHDMI Ethernet and Audio Return Channel (HEAC)と同様にUtilityとHPDの2本の信号線を使用し、コモンモードおよび差動モードそれぞれにデータを重畳して伝送します。ARCではCECのメッセージを使用するため、CECラインも使用する必要がありました。eARCは上記の2本の信号線を使って制御からオーディオ伝送までを行うためCECが不要です。そのためeARCでは、CECの設定を完全に分離することができるため、eARCを有効にすることがより簡単になります。もちろんeARCデバイスはARCにも対応可能なため、従来のHDMIデバイスとも今まで同様のARC伝送が可能です。
さて、話がそれましたが、以下がUtility, HPDのラインのそれぞれの波形です。(黄色: HPD 青色: Utility)
コモンモードと差動モードの両モードの信号が見えた波形となります。
コモンモード信号
コモンモードでは、eARC伝送のための制御・補助の役割を担います。
例えば、Heartbeatと呼ばれるeARCの状態の確認や通知が定期的に行われます。
左側と右側で波形の信号レベルが異なるのは、信号を出力しているデバイスがそれぞれTX、RXと異なるからです。
差動モード信号
差動モードではオーディオデータを伝送します。およそ98Mbpsまでのビットレートを伝送が可能で、L-PCMの場合192kHz 8chの伝送が可能です。
eARCのコンプライアンステスト
HDMI2.1の新機能のうち、eARCのCTS(Compliance Test Specification) がいち早くリリースされていますので、正式に対応を謳っているAVレシーバやTVが昨年頃より販売されています。
今では、AVレシーバの各社の最新ラインナップのほとんどがeARC対応になってきていますし、eARC対応のTVも増えてきています。
コンプライアンステストの内容としては、主に以下の2種類のカテゴリに分けられます。
- 物理層テスト
上述した各種出力信号がeARCの仕様を満たしているか、あるいはジッタや振幅レベルの耐性があるかのテストなどを行います。そのほか、インピーダンスの測定も行われます。
測定器としては、オシロスコープや信号発生器を使用し、上述した2つの伝送方式の両方を測定することになります。 - プロトコルテスト
オーディオやその他データに関するテスト、状態遷移に関するテストなどを行います。
測定器としては、専用のプロトコルアナライザを使用します。
おわりに
アリオンではeARC対応測定器をいち早く導入し、eARCのコンプライアンステストのサービスを行っているほか、eARC対応デバイスを数多く取り揃えていますので、eARCの接続性テストなども実施が可能です。
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