HDR10+が発表されて暫く経過し、対応するTVの市場への投入が期待されています。HDR10+対応のTV発売を待っているユーザーも多いのではと思います。そこで、今回はHDR10+に関してダイナミックメタデータ技術について解説してみたいと思います。
HDRとは
まず、HDRについて説明します。HDRとは、High Dynamic Rangeの略で取り扱える信号の最小と最大の幅が広い、つまり暗い色から明るい色の表現可能な幅が広いという意味です。HDMI規格やDisplayPort規格でもHDRをサポートしています。以下のマークを家電量販店やカタログで見かけますが、4K HDRというロゴ認証は存在しません。しかし、4KとHDRに対応しているという意味では、性能の高さを表しているとは言えます。
HDR10+とは
HDR10+は、Pixel Bit Depth 10bit以上、BT.2020 Wide Color Gamut、ダイナミックメタデータをサポートしています。ダイナミックメタデータとは、動的なVideo信号内容を示す情報、を表しています。メタデータは、その時に送信されているVideo信号がどの様な輝度成分を含んでいるかを記述してあります。スタティックメタデータも存在していますが静的つまり変化しない、ダイナミックメタデータは動的つまり変化する、という意味です。
では、ダイナミックメタデータを使用すると何が良いのでしょうか? Video信号は、夜景、曇、真夏の晴天、爆発等、様々なシーンに応じた輝度信号を送信しています。まず、夜景から真っ白な爆発シーンまでをスタティックメタデータで送信するとしましょう。輝度を簡単な数字で表し、シーン1(夜景):1~50、シーン2(爆発):51~100、全シーンの最大値:500とします。メタデータは固定のため、全シーンの最大値:500が送信され続けます。シーン2は、メタデータ:500を受け取り、輝度100よりも明るいシーンがあると想定するため、シーン2(爆発)は暗めに表示されます。
一方、同じシーンをダイナミックメタデータで送信するとしましょう。シーン1は、メタデータ1が送信され、輝度50までのVideo信号が含まれるという情報を持ちシーン2は、輝度100までのVideo信号が含まれるという情報を持ち、シーン1, 2に応じてメタデータが変化していきます。TV 、モニターは、メタデータをシーン毎に処理し、白潰れや黒潰れが発生しない様に輝度を動的にマッピングしてパネルに表示させます。
つまり、TV、モニターに搭載したパネルが持つ輝度レンジを各シーンに応じて使い切る絵作りを実現していると言えます。今までHDR実装が難しかったパネル輝度があまり高くないTV、ミドルレンジクラスTV、モニターにもHDRの実装を可能にしています。HDR10+ダイナミックメタデータテクノロジーは、HDRを身近にしてくれる理由の一つです。
HDR10+認証試験
HDR10+は、認証試験を受けてPassすればロゴマークを製品に付加することが可能で、HDR10+の実力を備えた製品として市場でアピールできます。TV、モニターの認証試験は、光学的特性とプロトコルがHDR10+に準拠しているかを確認しますが、試験の中にはHDR10+の特徴であるダイナミックメタデータが正しく処理されているか確認する項目もあります。HDR10+認証試験に合格したTV、モニターは以下のロゴマークが付いていますので家電量販店のTVコーナーで探してみて下さい。
終わりに
今回は、HDR10+のダイナミックメタデータついてなるべく分かり易いように解説してみました。高嶺の花だったHDRが皆さんのAV環境にビルトインできる時期がもうすぐそこまで来ています。HDR10+は、TV、モニター実装に高度な知識と技術レベルが求められるように感じます。その分、絵作りと表現の自由度が増し、映像の仕上がりがより高品位になっていくでしょう。家電量販店のTVコーナーでデモを見かけますが、同じ映像を映していてもメーカーによって見え方が異なるのは、この絵作りと表現方針の違いによるものと考えられます。この違いをテストエンジニアは、測定機材を用いて数値データを取得し、定量的・客観的に判断します。透きとおった水色、深みのある赤色、引き締まった黒等、私達テストエンジニアでも測定データを用いないと判別できないかもしれません。
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